誠の桜に止まる蝶~番外編~
「いやだな、邪魔なんてしてませんよ。ただその子が嫌がってるって教えてるだけですよ。」

この声・・・

「総司貴様。」

鵜殿さんが総司をにらむ。

「おい。鵜殿さん。こんなところでなにしてやがんだ?」

二人の間に土方さんが入る。

「なにもしておらぬ。」

鵜殿さんがつまらなさそうにつぶやく。

「じゃあその手を掴んでいる娘を離さしてやってくれねえか?清河さんの連れなんだよ。」

「ふっ。ならば仕方があるまい。」

そう言って私は手を放してもらう。

「総司、連れてってやれ。」

「わかった。君、おいで。」

「あ、はい!」

私は下を向きながら歩く。

なんとなく今総司の顔を見たら泣いてしまいそうだから。

今の総司は私のことを知らない。

だけど、やっぱりどんな時もあなたは私を助けてくれる。

このことがたまらなくうれしかった。

そして総司が歩調を緩める。

「大変だったね。大丈夫だった?」

「あ、はい。助けていただきありがとうございました!」

私はそう言って勢いよく頭を下げる。

「いいよ、あれは、鵜殿さんが悪いからね。さあ、見つからないうちにいきな。」

「はいっ!」

私はそう言って駆け出そうとする。

その時総司に手を掴まれる。

「え?」

「あ、いや、なんか昔君を見たような気がしたから。ごめん気のせいだね。」

そう言って総司はぱっと手を離す。

あの時、目があった時のこと?

私は少し驚きその場に立ち止まるが、向こうから人の気配を感じて総司に頭を下げて走り出す。
< 142 / 166 >

この作品をシェア

pagetop