セイントロンド
第一章 beginning
・夢
『…あぁ…あ…アダルテ…アダルテっ……』
声が聞こえる…
聞きたくも無い誰かの歎き。
『…すまない…君に辛い思いをさせて…』
見えてくる……
血を流す男性を胸に抱き、涙を流す美しい女性。
恐らく…男性はもう死ぬのだろう。
息も浅く、視点も定まっていない。
『嫌ぁ…アダルテっ…死なないで…死なないでっ…』
冷たくなっていく男性の体をさすりながら、女性は何度も乞う。
"死なないで"と………
『…僕は…君や…家族を苦しめる存在にはなりたくない…』
死を間近に、それでも男性は柔らかい笑みを浮かべていた。
『…私に…あなたを…?馬鹿言わないで、そんなのっ…あんまりよ!!』
涙を流し、女性は男性に強く口づけた。
『愛してるのっ…愛してっ…』
嗚咽を繰り返し、男性に縋り付くように抱き着いた。
『僕も…君を愛してる…から…だからっ…うぐぅっ!!』
男性は胸元を抑え、呻いた。
『アダルテ!!!』
胸元にはきっと悪魔の刻印が刻まれている。
悪魔と化する魔女の呪い…
『…僕は……う…ぐあああああっ!!!!!』
『アダルテーーっ!!!!!』
男性が悪魔となる瞬間、女性は男性の胸元に剣を突き刺した。