セイントロンド
メアリーが私を見つけてこちらへと走ってくる。
「「メアリー」」
と、メアリーの名を呼ぶと同じタイミングでカインが名前を呼んだ。
今度は私とメアリーが驚く番だった。
「なんであなたがメアリーを?」
使徒と関わるなんてメアリーはただの世話係なのに…
「カインとアメリア様はお知り合いなのですか!?」
メアリーは両手をキュッと握りしめ、不安そうに私達を交互に見る。
何…この表情……
メアリーまさかこの人の事…
「メアリーは俺の友達だ。まさかアメリアと知り合いだなんてな」
「ひっ!」
カインが私を呼び捨てにした瞬間、メアリーが顔を真っ青にする。
あぁ…メアリーは私を呼び捨てにした事を恐れてる。
神と同等の聖女を呼び捨てにするなんてと…
「あ?どうした、メアリー」
「…カイン……。アメリア様を呼び捨てで呼ぶなんて…周りの方々から反感をかってしまいます。どうか、おやめ下さい」
説得するようにメアリーはカインの手を握る。
―ズキンッ
あぁ…メアリーは私を呼び捨てにする事でカインが危ない目に会うと思って…
私は…そんなに恐ろしい…?
「な、何だよ突然…。メアリー、一体どうし…」
「…はぁ…大丈夫、私が皆に言っておくから。でも…その命が惜しいなら人前で私の名前を出さないほうがいい」
それだけ言って二人に背を向ける。
気分が悪い………
とりあえず早くこの場から立ち去りたい。
「アメリア様!!!」
「行くよ、メアリー」
スタスタと歩く私の後ろをメアリーが小走りで近づいて来る。
そんな私達をカインは呆然と見送ったのだった。