セイントロンド


―ガサッ


草を踏む音で我に返ると、無意識に花園へ来ていた。


「…母さん…」


ここへ来るたびに母さんを思い出す。


唯一母さんとの思い出を感じれる場所だ。


目をつぶれば思い出す。
私にもまだ…この世界が希望に溢れてると信じていたあの時間を……



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『お母さん、この白いお花はなんて言うのー??』

『アメリア、これはワルプルギスという花よ』


まだ幼かった頃、私は母さんの膝の上に座り、風に揺れる花を見るのが好きだった。



何より母さんといれる時間が幸せだった。


『ティアノリア、アメリア、こんな所にいたのかい?』


そこへ父さんが拗ねた顔で私達に歩み寄る。


二人で仲良くしているから、父さんはよく寂しがっていた。


父さんは神父で、よく仕事に追われていたから記憶はあまりない。


それでも大好きだった事は覚えてる。


『アメリアの歌が聞きたいな』

『そうね、レイド。私も聞きたいわ』


二人にお願いされるのが本当に嬉しくて、私は何度も歌を歌った。


二人の笑顔が大好きだった。











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