セイントロンド


「ワルプルギストテアノ方ヲ苦シメル存在ニハ変ワラヌ!!」


―ビュオッ


風が私達に向かって襲いかかる。


カインが私の前に出た。


「くそっ……」


カインの手からバチバチという音と共に炎が生まれた。


「…あなた達が戦うというのなら………」


私だって………
まだ死ぬわけにはいかない。


「私の死に場所はここじゃない。それに……」


カインの横に立ち、魔女を見上げる。


「私は…この戦いに巻き込んだ者達を守る責任がある。だから……」


銀銃を魔女へと向ける。


ワルプルギスの血に眠る聖なる力よ……


「語り合えないのなら仕方ない…」

「今更、分カリ合ウナド…愚カ。…銃ヲ抜ケ、ワルプルギスノ子ヨ!!!」



魔女は風を身に纏う。
この風圧…本気だ………


私達は本当に分かり合えないの…?


……どうして………


胸が苦しくなる。
本当の事を知ったからだろう…


今は魔女を悪とは思えない。
それでも………
私は銃を手放す事は許されない。



「…罪深き魔女に断罪を…judgment!!!!!」

「死ネェェッ!!!!!」


―ドガーンッ!!!!!


二つの力がぶつかり合う。風が消えると同時に魔女の気配が消えたのが分かる。


「……本当に…悲しい事……」


―ポタン


零れた涙が煤に汚れた頬を綺麗に洗い流す。


「…アメリア…お前は本当に……」


カインは私を優しく抱きしめた。


その手を振りほどく事も出来ず、じっとしている。


「カイン、聖堂へ戻るよ。負傷者の手当をしないと…」

「馬鹿野郎!!!今はお前のが傷だらけだろうが!!」


私を抱きしめる腕に力が入る。


「何を怒ってるの?
私の事はあなたに関係ない」


その腕から逃れようとすると、まるで逃がさんとばかりにカインは私の体を引き寄せた。


一体何だっていうんだろう…


私の事なんてほって置けばいいのに……



「頼むから…もっと自分を大事にしろよ…。頼むからっ…」


その腕は何故か心地好かった。


温かくて、優しくて…
何かが満たされていくようで………









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