セイントロンド
「…わからない…。あなたがそんな顔をする理由が私にはわからない」
泣きそうな顔をするカインの頬を両手で包む。
その端整な顔立ちが、何故か歪んでいる。
多分…私のせいで……
でも何故?
「…分からないか?俺は…アメリアがいなくなったら悲しいんだ。だから生きていてほしいって思うから…」
"だから悲しいんだ"とカインは付け加えた。
「私がいなくなると…悲しい?」
カインは同意するように何度も頷く。
私なんかがいなくなっても…悲しんでくれる人がいたんだ…
それが何故か嬉しかった。
拒絶されるだけの私に、この人は生きてほしいと言う。
「やっぱり分からない。でも……」
自然と浮かぶ笑みを、私は隠さずにカインへと向けた。
「っ!!!!」
カインは目を見開き私を凝視する。
「ありがとう…。私の命を尊んでくれて…」
優しい心を持つ人……
「そんな…大袈裟だって。ただ俺はお前に…生きててほしくて…さ…」
段々と声の小さくなるカインの頭を優しく撫でる。
「な!!?何だっ…よ…」
「…その心を忘れず、あなたは純真でいて。どうか……」
どうか…………
何にも染まらずに真っさらで。
どうか…………
絶望なんて知らずに、前だけを見て……
「そんなあなたがいる世界なら…」
「……アメリア?」
頬を赤く染めるカインを温かい目で見つめる。
命をかけて守る価値があると思えるから…
「…さぁ、ここを元に戻さないと…」
私はカインから離れ、一歩前に出る。