セイントロンド
「…こちらです」
ある一室の前で男は足を止めた。
「この部屋の中です」
「ありがとう」
私が扉に手をかけると、慌ただしい足音が近づいてくるのが聞こえた。
顔を上げると教会の聖職者が二人、私に駆け寄って来た。
「聖女様が足を踏み入れるような所では!!」
「さ、このような汚い場所から出ましょう」
二人は慌てたように私に言葉を浴びせる。
汚い…場所………?
私の中でこの言葉がぐるぐると回っていた。
それからふつふつと怒りが込み上げてくる。
「…その言葉を撤回して」
「はい?」
低い声で呟く私に、聖職者達は首を傾げる。
それすら憎らしく思えた。
「その言葉を撤回してと言ってるの!!!」
突然叫んだ私をその場にいた人間達が驚いたように見つめる。