セイントロンド
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「まさか、あなたが同行する使徒だったんだ」
「まあな、だからアメリアの部屋まで迎えに行ったんだ」
今回の事件を私と担当するのはカインだった。
現場へと向かいながら私達はたわいもない話しをする。
「カインは…怖くないの?」
「ん?何が?」
この案件は使徒では解決出来ないと判断された。
だから聖女自ら調査に当たる。
それをカインは知ってるはずなのに……
「高位な魔女かもしれないんだよ?」
使徒が何人かかったって高位の魔女には勝てない。
力が違いすぎるんだ。
「怖くないって言うのは嘘になるけどな、覚悟は出来てる」
カインは自分の両手を見つめた。
「こうするしかなかったからな…………。あの時の俺には………」
それから自嘲したように笑う。
「…………カイン?」
自嘲したように笑うカインは見ていて何故か痛々しかった。
一体何がカインにこんな顔をさせるんだろう……
良く笑う人だけど、今の笑みはどこか影を感じる。
「あ、あぁ?悪いな、ぼーっとしてたみたいだ」
ニカッと笑いカインは私の頭をくしゃっと撫でる。
今度はいつも通りの笑みだった。
良かった……
何故かホッとした自分がいる。
……………良かった……?
私、今何を……
カインの笑顔が戻ったから良かった?
それより…………
「ベールが取れちゃうからやめて」
―パシッ
「って!……悪かったって」
カインの手を払い睨みつけると、参ったと言わんばかりに両手を上げた。