セイントロンド


――――――――――
――――――――
――――――


「まさか、あなたが同行する使徒だったんだ」

「まあな、だからアメリアの部屋まで迎えに行ったんだ」


今回の事件を私と担当するのはカインだった。


現場へと向かいながら私達はたわいもない話しをする。


「カインは…怖くないの?」


「ん?何が?」


この案件は使徒では解決出来ないと判断された。
だから聖女自ら調査に当たる。

それをカインは知ってるはずなのに……


「高位な魔女かもしれないんだよ?」


使徒が何人かかったって高位の魔女には勝てない。


力が違いすぎるんだ。


「怖くないって言うのは嘘になるけどな、覚悟は出来てる」


カインは自分の両手を見つめた。


「こうするしかなかったからな…………。あの時の俺には………」


それから自嘲したように笑う。


「…………カイン?」


自嘲したように笑うカインは見ていて何故か痛々しかった。


一体何がカインにこんな顔をさせるんだろう……


良く笑う人だけど、今の笑みはどこか影を感じる。


「あ、あぁ?悪いな、ぼーっとしてたみたいだ」


ニカッと笑いカインは私の頭をくしゃっと撫でる。


今度はいつも通りの笑みだった。


良かった……


何故かホッとした自分がいる。


……………良かった……?


私、今何を……
カインの笑顔が戻ったから良かった?


それより…………


「ベールが取れちゃうからやめて」


―パシッ

「って!……悪かったって」


カインの手を払い睨みつけると、参ったと言わんばかりに両手を上げた。













< 68 / 99 >

この作品をシェア

pagetop