セイントロンド
その時―…
―ピキンッ
嫌な気配がした。
とっさに背後を振り返るが、何もいない。
「…………………………」
ただ…見られているような…
何かの視線を感じる。
「アメリア?」
「……あなたなの…?」
ねっとりと体に纏わり付くようなこの感じ……
夢で見たあの残酷な悪魔の…
「アメリア!!」
「!!!?」
名前を呼ばれ我に返ると、カインが私の肩を掴んでいた。
その心配そうな顔に私も戸惑う。
「あ…ごめん…。なんでもないから…」
自分の世界に入っていたみたいだ。
いけない…
メフィスト・フェレスの事を考え過ぎだ。
少し敏感になりすぎてるんだ。
ちゃんと気配を感じなきゃ…
「なんでもない…か。嘘が下手だなアメリアは」
カインは少し怒ったように私を見つめる。
「嘘なんてついてない。あなたには…」
「関係ないから…か?」
自分が言おうと思った事を見事に言われ言葉を失う。
「…………………」
「はぁ…何が不安なんだ?」
逃さないとばかりにカインの私の肩を掴む手に力がこもる。
「…知っている悪魔の気配がした。もう消えちゃったけど…」
…しぶしぶ言わされてしまった。
別に話す必要なんて無いのに。
ただ…カインを危険な目に合わせるだけなのに…
「悪魔!?気配、追えるのか?」
「…もう追えない。気配が完全に消えたから……」
メフィスト・フェレス…
もしあの悪魔が同じ悲劇を繰り返そうとしてるなら…
必ず狩らなくてはいけない。
「そうか…なら他の遺体をあたろう。何か分かるかもしれない」
カインの言葉に無言で頷く。
そうして、私達は遺体のあった現場を全て回った。