セイントロンド


「あ、ありえねぇー…」


茫然とするカインに私は首を傾げる。


「そんなに驚く事なの?」

「あたりまえだろ!!あの未来を見る巫女だぞ!伝説上の存在に会えるなんて…」



私と出会った時はこんな感動してなかったのに…


何か失礼だ。



「確かに、星読みの巫女はこの時代の人間達からしたら伝説の中の生き物かもしれないけど、ちゃんと存在するよ」


先の未来を見知り、伝え語る神の御使い、伝説の巫女。


いつかの時代では、聖女でなく巫女が世を治めていた時もあった。


でも…いつしか巫女の存在は歴史の裏に隠されていった。


今だって民には伝説としか語られていない。


巫女の存在は教会関係者など、一部の人間にしか伝えられていない。


聖女は表の世界、太陽と例えるなら、巫女は裏の世界、月と例えられるように私達は対のような存在なのだ。


「巫女に会える人間は限られてるから、彼女の存在を知る人間は少ないけれど、彼女だって生きてる」


ただ………
外の世界に出る事を許されず、幽閉された哀れな存在。


私と同じ運命を背負う存在。


「私が唯一信頼するのは彼女だけだよ」


フィリナは私を裏切らないし裏切れない。


そして彼女も同じだ。


私達は二人だからこそ強くいられる。


例え言葉を交わさなくても…生きてさえいれば…


それでも私はフィリナをおいて死ぬ事になる。


フィリナは私に死を告げた。それが変わる事はありえない。















< 73 / 99 >

この作品をシェア

pagetop