セイントロンド
・月のお告げと悪魔の尾
また夢を見ている……
深い深い海の底に沈んでいく…
体なんてものはなくて、ただ意識だけが存在しているような……
『…ワラワハ…ソナタラガニクイ…ニクイ……』
あぁこの声は………
あの黒髪の少女の姿を思い出す。
大魔女リリス……
『アダルテ…ワラワハソナタをアイシタ…。ユエニクルシンダ…』
…愛した事さえも、否定しないで……
あなたは戸惑っていただけ…
『ワルプルギス…ソナタガイタカラ…ソナタサエイナケレバ…』
どうして……
親友だったのに………
急に場面が暗い岩に囲まれた空間へと変わる。
その中央には変わり果てた大魔女リリスが立っていた。
頬はこけ、ただぼーっと夜空の月を見上げていた。
『リリス、気分はどうだい?』
と、そこへ闇からの訪問者が訪れる。
『メフィスト・フェレスカ…』
そう、あの悪魔の少年メフィスト・フェレスがいた。
『君に報告があるんだ、たった今アダルテが死んだよ』
メフィスト・フェレスの言葉にリリスは笑みを浮かべる。
『フッ…アノオトコハシンダノカ…』
笑っているくせにリリス泣いていた。
まるで心と体がバラバラになったように…
『悪魔になりかけた所をワルプルギスが浄化したみたい。あとはワルプルギスを殺すだけだね』
少年のような笑みを浮かべるメフィスト・フェレスにリリスは背を向ける。
『ワルプルギス…アトハソタナヲ……』
愛しい人を失い、今度は親友を手にかける。
もう…自分を傷つけないで…
『ワルプルギスは君を殺しに来るだろうね』
『ワラワトテオナジ。ワラワノテデホウムッテヤロウ』
リリスはまた月を見上げる。
『…ツキ…カ………』
何を思い月を見上げるのか、私には分からない。
でも…………
流れる涙が、後悔と戸惑いを意味しているのは分かった。
私に……あなたを救えるだろうか…?