セイントロンド


「………………ふぅ」


空を見上げれば、心とは裏腹に晴れ渡っていた。


空は綺麗だ……
なのに世界は汚い。


私の生きる世界………


「あの…さ………」


カインがおずおずと声をかけてきた。


「…何か用?」


全く同じ返答を返す私は可愛いげ無いんだろうな…


別に、恋愛とか興味ないし。どうせすぐ消えてしまうのに…大切なモノを作るなんて出来ない。


未練が残って、私も母さんと同じように生きたいと願ってしまう。


生きたいと願っても、母さんは死んでしまった。


悲しい世界……



「…泣いてるのか……?」


カインは私に手を伸ばし、目元を親指で拭う。


その動作を呆然と見つめていた。


泣いてる……?
"誰"が………??



「さっきも泣いてたろ。だから気になって…」


カインの瞳は髪とは対象的な碧だった。


気になってって………
赤の他人がどうして…


「変な人…他人の事なんてほっておけばいいのに」

「ほっておけなかったんだから仕方ないだろ!泣いてる女を見ぬふりなんて…」


…ジェントルマン?
ただのお人よし?


というか…………


「あなた私が誰だか分かってる?」


私は聖女で、普通なら話しかける事すら皆躊躇するのに…


「…………?
名前ならまだ聞いてないけど?」


素っ頓狂の答えが返ってきた。


駄目だこの人……
全く話しが噛み合わない…


「もういい。…私はアメリア」


みよじは言わなかった。
この世界にとってワルプルギスというのは崇める神に値する。


私だって人で在りたいと願ってはいけない?


メアリーでさえ私を神のように見る時がある。


それが辛い。
私は私でしかないのに…


「アメリア…。よろしくな、アメリア」


カインはニッと笑い私の手をとった。


「…二回も呼ばなくていいから、あと、この手何?」


私は握られた手を目の前へと持ち上げる。












< 9 / 99 >

この作品をシェア

pagetop