夏が終わる

――負けた。



水の中にでもいるかのように音が退いた。
視界が曇り、色褪せる。



負けたんだ。



8回裏で1点勝ち越され、迎えた9回表。
攻撃。
2アウト、ランナー2塁だった。


ハッと我に返り草太を探す。
彼は泣くでもなく、
悔しがるでもなく、
ただぼんやりとグラウンドを見ていた。
右手にはバットが握られたままだった。


チームメイトに促され、整列し、
挨拶を終え、
ベンチに戻っていく草太を私もぼんやりと眺めていた。

試合終了を告げるサイレンが耳に煩わしかった。



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