Dummy Lover
*
さっきの渡り廊下の女子生徒。
ちらっとだけ見えたけど、あれ誰だったかな。
絶対見たことあるんだけど。
「あ、泉!」
「ん?」
さっきの中庭のことを考えながらクラスに戻ると、僕の唯一信頼出来る親友である、塩塚結城が僕を指差しながら寄って来た。
僕は訳が分からなくて、首を軽くかしげる。
「結城、どしたの?」
「お前授業サボりすぎ!また先生に呼ばれてるから!」
「…もしかして、」
「あぁ、菊池先生だよ」
結城からの言葉を聞いて、僕はため息をついた。
菊ちゃんこと、英語の菊池先生は普段優しいけど怒ると怖い。
でもってサボり魔の僕を、大人気もなく敵視してる。
ちなみに3組の担任。
僕は本当に3組じゃなくて良かったと思ってる。
「はぁ…。よりによって菊ちゃんの授業サボるんじゃなかったな…」
「つか、授業をサボんなよ。放課後、職員室来いだって」
「ん、ありがと、結城」
「手のかかる親友だこと」
「キモいよ」
ふたりを繋ぐ運命の糸が、
今まさに、交わろうとしている。