Dummy Lover



どちらも、遠目から見ても分かるほど整った顔立ちをしていて、私は少しだけ目を見開いてしまった。

でも見覚えのある顔じゃない。




「…誰?」

「えぇっ!知らないの!?」

「しっ!聞こえちゃうよ?」


私が呟くと、桜は心底驚いて声をあげた。
私たちはとっさに、渡り廊下の柵に身を隠した。

桜は、私の肩を叩いて小声で話す。


「男の子の方も知らないの?」

「それどころか女子も知らないけど」

「…うちの学年で白谷を知らない人がいたとは…。しかも超身近だし」

「しらたに…?」




どこかで聞いたことのある名前な気がした。

確か…、




「あの人があの〝しらたにいずみ〟!?」

「声がでかい!」

「あいつがあの…」


桜の声は、耳に入らなかった。




見た感じ、とても細くて不健康そうだったから、イメージと全然違った。
でも顔はきちんと整っている。


白谷泉。
名前だけ聞いたことあったけど、顔は知らなかった。

女タラシで優しくてかっこいい男子、で有名。
学校中で人気、なはず。

王子様、というのはまさに、彼のことを言うんだと思う。
だって実際、噂では〝王子〟って呼ばれてるの聞いたことあるし。
私は噂嫌いだから、あまり興味を持って聞いたことはないけれど。


まあ、私とは大違い。
私は、優等生八方美人で有名ですから。



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