Dummy Lover


やっぱり“あいつ”のことを思い出すと、今でも心臓がドクドク脈打つ。

でも、そんなこと、誰にも知られたくない。触れられたくない。




「おい、泉。…大丈夫か?顔色が、」

「…うるさい…!」


心配してくれた珠樹の手を、僕は見ようともせずに払った。
悪いことだと分かっていても、今珠樹に助けられたら、自分が崩れてしまう気がした。


ふと、珠樹のため息が聞こえた。


「何も言わねぇから、休んでけよ。もう何も聞かないから」

「っ…」




優しすぎるだろ。
僕が由愛ちゃんをどうしようとしてるか、きっと珠樹は気付いてる。

それなのに…――




そんなことを思いながら、僕は一番近くにあったベッドに横になり体を預ける。
そして、そのままだんだんと眠りに落ちていった。

由愛ちゃんや珠樹のこと、今考えなきゃいけないことがたくさんあったのに、それも全て忘れてしまっていた。


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