Dummy Lover
ガラ、という音がして、保健室の扉が開き、白谷がトイレから帰ってきた。
すると、ちょうど珠樹先生がココアを淹れて、私が座っているベッド脇に椅子を並べて、その上にマグカップを置いた。
「さ、泉。ココア入ったよ。由愛ちゃんも」
「おーありがと」
「ありがとうございます」
はー、おいし。
珠樹先生の淹れるココアは、なぜかとってもおいしい。
使ってる粉は、スーパーで売ってるのをよく見るようなものなのに。
白谷は私の横で、珠樹先生が並べてくれた椅子に座り、ココアを飲みながら、ため息をついた。
「ていうか、もう、噂ってめんどくさいねー」
「え、」
「泉、どうしたの?」
珠樹先生が首を傾げながら聞くと、白谷は眉を下げ、苦笑しながら話し始めた。
「いや、由愛ちゃんと付き合ってるの。バレちゃったからなー…」
「それは、アンタが私の名前を出して、授業すっぽかすからでしょ」
「だって、僕本当にあの日は心配したんだよ?急に由愛ちゃん、目の前で倒れちゃったし」
「…」
倒れた、か…。
私は、まだ、あの時のことを引きずっているんだ。
“あの言葉”を思い出すだけで、気を失っちゃうなんて。