Dummy Lover


あの日。

私が白谷といる時に、“あのこと”を思い出して、倒れちゃったあの日。
初めて保健室に行き、珠樹先生と出会ったあの日。

白谷は授業中、珠樹先生からのメールを読んで、『由愛ちゃんのとこに行って来る』と言って、教室を飛び出したらしい。


それじゃ、バレるでしょ。
私と白谷が付き合ってることくらい。

“偽恋人”ってことは、誰にもバレてないだろうけど。






「心配ないよ。あの時は、過労が原因の貧血。泉がいろいろ由愛ちゃんを困らせるから」

「僕のせい?ひっどいなー」

「ち、違うから…!気にしないで」


白谷が私の顔を覗き込みながら言うから、慌てて首を横に振った。
すると、白谷は何を思ったか立ち上がって、私の頭を撫でる。


「本当、由愛ちゃん、可愛いね」

「な…!」


柔らかい笑顔で、そんなこと言われたら、誰でも顔が赤くなるに決まってる。
私も例に漏れず、絶対顔が赤くなってる。

ちらっと珠樹先生を見ると、わざとらしく目をそらして、見てみぬフリをしている。


こ、こんなの、恥ずかしすぎる…!


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