Dummy Lover
*
うざい…。
うざすぎる、この女。
僕、白谷泉は〝王子〟なんて呼ばれていて、優しいって言われてるみたいだけど、そんなの表向き。
心の中じゃ、いつも毒吐いている。
〝女タラシ〟とも思われてるみたいだけど、はっきり言って違う。
逆に苦手なくらい。
愛想振り撒いただけで、他人はそう判断したみたいだけど。
けれど、周りの人間はそんな僕の本性を想像もしないようで。
ほら今も、同じ学年の金城瑠璃に校舎裏に呼び出されて、告白なんか受けている。
「ごめんね…」
「え…?」
僕が丁重にお断りすると、金城瑠璃は眉間にシワを寄せる。
金城瑠璃の本当の顔が垣間見えた気がした。
「え、白谷くん…?私のこと、知ってる…よね?」
「知ってるよ?1組の金城瑠璃ちゃん、でしょ?」
柔らかく応える。
こんな女相手に、こんなに優しくしてるんだから、誰か誉めてほしい。
コイツは、相当自分に自信があんのか?
しかも、渡り廊下から誰か覗いてやがる。
ふざけんなよ。なめてんのか?
「そうよ。じゃあなんで…!」
金城瑠璃が詰め寄って来るから、思わず僕は彼女の口を塞ぐ。
そして、渡り廊下にいる人に聞こえないように、彼女の耳元で囁いた。
「お前、ウザイ。いくら僕が女タラシって言われてたって、選ぶ権利くらいあるんだよ」
ついに本性が出てしまった。