RAIN DROPS -初めての恋-




「じゃあ、行こっか?」

あたしがローファーを履いたのを見計らって、天音くんは

「はいっ」

と左手をあたしの前につき出した。



―――ドキンッ



胸の高く跳ねた音がした。


「うん…」


あたしはそれを聞かれないように、笑顔で右手を差し出した。



――冷たい手だった。


なのに、あたしの右手から伝わる天音くんの温度が、反比例であたしの温度を上げていく。


天音くんの大きな手に、あたしの手が包まれている。


なんでだろ?


手をつなぐって、安心するんだね……。



「笑花の手はちっちゃいね?」


クスクス笑われて、ちょっと膨れっ面になってしまう。


「そんなことないもんっ」



そんな会話をしながら、

にこにこ笑顔の天音くんと
真っ赤な顔したあたしは、

小さなビニール傘の中で手をつなぎながら、

一緒に歩き出した――。




< 94 / 110 >

この作品をシェア

pagetop