キズナ~私たちを繋ぐもの~

「俺は兄貴がいるけど、男同士はあんなにひっついたりしないからさ、なんだか不思議だった。俺が妹だったらこうなってたのかな、とか思ったりさ」

「……」

「プロポーズするまで、俺たちはうまくいってた。
俺は綾乃の気持ちに疑問を感じたことなんてなかったんだ」

「うん」

「だけど、あの日から綾乃の様子がおかしくなっただろう。
俺なりに考えてみたんだよ。何が嫌なのかって。

お母さんの事気にしてるのかなと思って病院にも行って見た。
でもそのことだけじゃないよな。

あの時の綾乃の顔見てたら、……なんだかわかったんだ」

「……」

「綾乃は、いつも泣きたそうな顔で達雄さんを見てるんだなって」

「……司」

「ただの兄弟愛じゃないから、結婚が辛いのかなって」

「ごめんなさい」


隠している気持に気付くほど、ちゃんと私を見ていてくれたんだ。

それなのに、自分から告げる前に、彼に言わせてしまった。
そんな申し訳なさに、涙がこぼれる。

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