キズナ~私たちを繋ぐもの~


「泣くなよ。俺は知りたいだけなんだ。
もし本当にそれが迷ってる理由だとしても、達雄さんは兄貴だろ」

「……」

「どうにかなる相手なら、俺も考える。
綾乃を誰よりも幸せにできる相手で、相手も綾乃を一番に好きだって言うなら諦めてもいい。
だけど相手が兄貴じゃ、未来はないだろ。
俺もそんな理由では、綾乃と別れられない」

「司」

「俺を選んで」

「……」

「忘れされてみせるから」


司の眼差しは真剣で、胸が痛くてたまらない。

もらった缶コーヒーは、飲むことも出来ないまま冷めてしまって、私は足元にその缶を置いた。

こんなに優しい人を、傷つけていてはいけない。
気持ちが揺らいではいけない。

そう決めて、家を出たんだから。

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