キズナ~私たちを繋ぐもの~
「……ごめんなさい」
「綾乃」
沈黙が舞い降りた。
小さな子供の歓声が何故かとても遠くに響いて、時折り吹く風がとても冷たかった。
閉園を告げるアナウンスが、鳴り始める。
「私は、ずるいの。お兄ちゃんへの気持ち、ずっと認めたくなくて、誤魔化してた。……だけど」
「綾乃」
「だけどやっぱり、捨てられない」
「……」
「こんな私と結婚しても、司が不幸になるだけだよ」
「綾乃」
強い語気と共に、彼に引き寄せられる。
足元に置いた缶コーヒーが、カランと音を立てて転がり中身がこぼれ出した。
腕を、背中を強く掴まれ、髪の上に何度も息がかかる。
逃れなれないほど強い力で抱きしめられて、私の頭の中は司の香りで一杯になった。