キズナ~私たちを繋ぐもの~
私はカバンの中から、指輪の入った箱を取り出した。
「ずっとあなたに甘えてた。
お兄ちゃんの事、忘れさせてくれるって、そう思ってたの。
でもダメだった。
だから、……これは受け取れない」
そっと手に乗せて、司から一歩離れる。
彼は自分の体を思うように動かせないみたいに、ぎくしゃくとぎこちない動きを見せた。
「ごめんなさい。さよなら」
それ以外に、もう言える言葉が思いつかなくて私はそのまま背を向けた。
背中に司の声がする。
でも、何を言っているのかは聞き取れなかった。
とにかく彼と距離を置きたくて、敢えて人ごみの中にもぐりこんだ。