キズナ~私たちを繋ぐもの~
兄と彼女
バスの中で、私を正気に戻したのは電話の着信音だった。
聞きなれた音にびくりとしてカバンを開けると、電話ではなくメールだった。
差出人は司。
その内容を見るのが怖くて、何も確認しないまま携帯電話の電源を切った。
気がつけば車内の中はもう閑散としていて、アナウンスは終点を告げている。
バスが停車したのは駅前だった。
「……どうしよう」
とりあえず、バスを降りてみるもどこに行ったらいいかわからない。
兄は家にいるだろうか。
問いただされるかと思うと家にも戻りづらい。
呆けたままあたりを見回して、最近ではあまり見かけない公衆電話を見つける。