キズナ~私たちを繋ぐもの~
……家にかけてみようか。
兄が出なければ、家に帰って部屋に閉じこもればいい。
途中で帰ってきたって寝たふりをすれば済むことだ。
兄がいるなら家には帰りたくない。
迷って、何度かあたりを行ったり来たりする。
そうして気がつけば、あたりはもう真っ暗になっていた。
震える指で10円玉を入れ、家の電話番号を押した。
コールを15回目まで数えて受話機を置く。
いない。
どこかに出かけてるんだ。
だったら家に帰ろう。
このまま一人でふらついているのは怖い。
バスプールで家の近くまで行くバスを捜し、乗り込んだ。
夕暮れの景色は赤とも青ともつかず、どこか不安感を沸き立たせる。
心もとなくなって両手で自分の体を抱きしめた。
一人になってしまったという事実が、見える景色から温かみを奪っていく。
司が今まで、どれだけ支えになっていたのかを強く実感した。