キズナ~私たちを繋ぐもの~
「はぁ、はぁ、……もう」
「ごめんなさいね。寝てた?」
紗彩さんが、髪を直しながら言う。
細い体をしているのに、紗彩さんは案外力があるんだ。
私に比べれば、平気そうな顔をしている。
「すいませんでした。あの、とりあえずお茶でも出しますから」
二人で部屋から出て居間へと向かう。
紗彩さんは私をちらりと見ると、軽く笑って言った。
「電話借りていい?
達雄の車運んできたから、私はタクシーで帰らせてもらうわね。後で請求するわよって言っておいて」
「はい」
タクシー会社へと電話する紗彩さんを見ながら、疑問が湧きあがる。
それなら、紗彩さんの部屋に二人で行けばよかったんじゃないのかな。
別に家に帰ってこなくても、大人なんだから心配なんてされないのに。