キズナ~私たちを繋ぐもの~
「達雄から、何もきいてないのね」
「え?」
紗彩さんは、私をじっと見る。
その視線は穏やかで優しくて。
私が紗彩さんに感じているような、嫉妬交じりの感情はひとかけらだって感じない。
それは、私が妹だから?
嫉妬する対象にもならないから?
紗彩さんは私が入れたお茶を一口飲むと、そのまま視線を部屋の中へと泳がせた。
「結婚はしないわよ」
「どうして、ですか?」
兄はもうすぐ35歳。
紗彩さんだって、詳しい年齢は知らないけど30歳くらいにはなるはずだ。
紗彩さんは困ったように眉を寄せ、唇は微笑みの形をかたどった。
そして、左手の薬指についたシンプルな指輪を、反対の指でゆっくりとなぞった。