キズナ~私たちを繋ぐもの~
「私には子供がいるの」
「え?」
「結婚してたのよ。……今もしてる。夫は死んでしまったけど」
「嘘……」
「本当よ。だから達雄とも、娘が寝てから家を抜け出して会ってるの。朝までは帰らなきゃいけない。両親とも同居してるしね」
「紗彩さん」
「達雄と私は、契約恋愛なの。結婚はしない。ただ、寂しい時に一緒に居るだけの」
その時、プッという短いクラクションの音がした。
タクシーがやってきたのだ。
「もう行くわね。綾乃ちゃんも、色々複雑みたいだけど、素直になった方がいいわよ」
「紗彩さん」
「あなたが幸せになってくれたら、達雄はきっと嬉しいんだと思うわ」
「……」
じゃあね、と軽く言って、紗彩さんは外に出た。
タクシーの運転手と何か話しているのが聞こえる。
でも、内容までは頭に入ってこない。