キズナ~私たちを繋ぐもの~


「アヤ、アヤ」


愛おしそうに呼ぶ声に、体中から熱がこ込み上げてきて、
何度も重なってくる唇に、意識が飛んで行きそうになる。


「アヤ……アヤノ」



その時兄が呼んだ名前に、私の体が固まった。

兄はそれにも気づかずに、強く体を押し付けながら私を抱きしめる。

背中、頭、腕。
大きな手が、私の体を確認するように撫でていく。

胸元がはだけて、冷たい空気が入りこんでくる。


今、なんて言ったの?


そう言葉にしたいのに、唇は塞がれたまま互いの熱い息が交差するだけで。

嬉しいからなのか悲しいからなのか分からない涙が、私の瞳に込み上げてくる。

そしてそれは、そのまま目尻から耳に向かって伝って行った。

私の顔を包むように兄の手が頬をなぞった時、その雫が指先に触れ、兄はびくりと体を震わせた。

兄の動きが止まり、私は恐る恐る目を開ける。


そして、

目が合った。

< 124 / 406 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop