キズナ~私たちを繋ぐもの~
告白と決別
身じろぎもしなかった兄が、震える手で私の背中を触る。
何か言葉を出されるのが怖かった。
おそらく出される言葉は、否定の言葉だと思うから。
「綾乃」
「いや。何も聞きたくない」
「綾乃」
「……どうして私の名前を呼んだの?」
呼びかけを質問で返した。
自分の行動を正当化できるたった一つのよりどころ。
兄があの時、私をきつく抱きしめながら呼んだ名前は、私のものだった。
「それは……」
兄の首筋が冷たい。
汗をかいたんだろう。べたりと粘つくような感触。
それさえも触れていたいと思う。