キズナ~私たちを繋ぐもの~
『彼』はテレビを消して、私を抱え上げた。
途端に嘘の寝息が乱れる。
予想外の出来事に、心臓は高鳴り続けていた。
『彼』の服についた、普段吸わないはずのタバコの匂いが鼻孔をくすぐる。
飲み会の日はいつも、こんな匂いをさせている。
会社によく吸う人が居るのだろう。
『彼』は私の嘘の寝息を疑うこともせず、そのまま2階の私の部屋まで運んでくれた。
この広い胸に抱えられるのは、何年振りだろう。
嬉しいような切ないような感情に、自分でも戸惑ってしまう。
ゆっくりと優しくベッドに横たわらせてくれたかと思うと、上から布団をかけてくれた。
一連の動作に戸惑いが無いことが少し寂しく感じる。
『彼』は、自分の恋人もこんな風にベッドに寝かせるんだろうか。