キズナ~私たちを繋ぐもの~
別れ際、兄はまだ酔いの残った顔に精一杯の謝罪を込めて私を見下ろした。
「アヤ」
「おにい……ちゃん」
「ごめんな」
「……車、出しますよ。達雄さんしっかり寝てくださいね」
会話を遮るように、司が車を発進させる。
遠ざかる兄の姿を見ていたら、なんだかとても切なくなって。
司に悪いという気持ちが確かにあるのに、涙がポロリとこぼれた。
「綾乃」
「ごめん。……ごめん」
「なんで謝るの」
「だって、泣いたから」
「謝るなよ」
司は前を向いたまま、小さくそう呟くと車を走らせた。
私は涙をこらえるのが精一杯で、何も話す事が出来なかった。