キズナ~私たちを繋ぐもの~
息を呑んで、兄は今度は私を見た。
私は目を合わせることも気まずくて、身を縮めるようにしてうつむいた。
「それは、……駄目だ」
「どうしてですか?」
「別れたって、言ってなかったか?」
「昨日話し合ったんです。だから同棲じゃない、同居です。……達雄さんとここに二人で住むのだって、問題あるでしょう?」
「……っ」
兄は言葉を詰まらせて、目を泳がせた。
私の頭上をかすめるように、私の処遇が話されることが不思議だった。
「綾乃」
先に私に目を向けたのは兄。
右腕をそっと握って、覗きこむように私の顔を見た。
それは子供の頃からの変わらないしぐさ。
私が泣いていじけていると、必ず向けられた優しい瞳。