キズナ~私たちを繋ぐもの~
それから10日。
私は司の部屋から会社に通った。
同居という形をとるからにはと、私は部屋代の3分の1を支払った。
後は夕飯をつくってくれればいい、と彼が言うので、毎日急いで部屋に戻っては料理を作った。
司がそれを、嬉しそうに食べてくれることに胸は痛んだけど。
そういう契約なんだと自分に言い聞かせることで、なんとかやり過ごしていた。
この間の私たちの暮らしは、まさしく『同居』だった。
最初に宣言した通り、彼は私に性的な意味で触れることはなかった。
もうすぐ兄の誕生日だ。
今年はピアスをもらったから何か返そうかと思っていたけれど、今のこの状態ではそれも不可能だ。
徐々に司の部屋に慣れ、家電の使い方に戸惑わなくなると共に、一人であの広い家にいる兄の事を思う。
どんな気持ちで、今そこに居るのだろう。
私があんなことを言わなければよかったのだろうか。
あの時、兄の寝顔にキスなんかしなければ、ずっと変わらず、兄妹として仲良くいつまでも……。
「無理だよ、ね」