キズナ~私たちを繋ぐもの~
母の方は、いつもより穏やかな表情で私を見る。
頬だってこけているしやつれてだっているのに、体から発せられる空気はいつもよりも優しかった。
「綾乃」
「なに?」
「今までごめんね」
「……なんで、謝るの?」
母が透けてしまいそうな顔で笑う。
なんだか、こんなに笑う母を見るのは久しぶりな気がする。
「ずっと、アンタと達雄を苦しめてるって思ってた」
「お母さん」
「病院のベッドで、ただ時を過ごすだけ。
私がいなければアンタ達はもっと自由になれるし、お金だってもっと自分たちの為に使えるようになる」
一陣の風が窓から流れ込んできた。
窓が開いていたのかと、調子はずれな事が頭の片隅に思い浮かんだ。
「何よりお父さんに先立たれたのが辛くて辛くて。ずっと苦しかった」
「お母さん。やめてよ」