キズナ~私たちを繋ぐもの~
兄と母は、睨みあうように視線を合わせていて、私はそれをただ見てることしかできない。
いつの間にか司が近くに来ていて、私の肩を兄から離すように引っ張った。
「お義母さん」
「あ、司さんもいたんだったわね。
……ごめんなさいね。見苦しいところばかり見せて」
「いえ。達雄さんから軽く聞きました。体調が思わしくないんだそうですね」
「ええ。私みたいなお荷物は、早くいなくなった方がいいのよ」
「お義母さん。そんな事言わないでください」
司が母の傍によって、両手を握る。
どこか芝居がかったその光景を、私はただぼうっと見ていた。
「綾乃の事は、俺に任せてください」
「……司?」
兄の体がびくりと動いた。
私もただ驚いて司を見る。
司は母の手を握りながら、ゆっくりと首だけをこちらに向ける。
視線が絡んで、胸がドキリと鳴った。