キズナ~私たちを繋ぐもの~


「……結婚しよう」

「え」


まっすぐにそそぎこまれる視線に、目が離せない。
心臓が痛いほど鳴っていて、傍に居る兄の周りの空気がぎこちなく固いのを感じる。


「綾乃。俺と結婚してください」

「つ、かさ」


こんなところで、再プロポーズをされてもどう答えたらいいと言うのだろう。

母が期待を込めた眼差しでこっちを見ている。

兄の顔は見れない。
だけど、伝わってくる呼吸一つ一つが私の体を揺さぶる。

ここで答えなきゃいけないの?
お兄ちゃんの目の前で?

答えは一つしかない。

昨晩のような結果になって、他に選択肢なんてある訳ない。

司と生きて行く。
どんなに頑張っても兄と私の関係が変わる訳が無いのだから。

< 188 / 406 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop