キズナ~私たちを繋ぐもの~
「……結婚しよう」
「え」
まっすぐにそそぎこまれる視線に、目が離せない。
心臓が痛いほど鳴っていて、傍に居る兄の周りの空気がぎこちなく固いのを感じる。
「綾乃。俺と結婚してください」
「つ、かさ」
こんなところで、再プロポーズをされてもどう答えたらいいと言うのだろう。
母が期待を込めた眼差しでこっちを見ている。
兄の顔は見れない。
だけど、伝わってくる呼吸一つ一つが私の体を揺さぶる。
ここで答えなきゃいけないの?
お兄ちゃんの目の前で?
答えは一つしかない。
昨晩のような結果になって、他に選択肢なんてある訳ない。
司と生きて行く。
どんなに頑張っても兄と私の関係が変わる訳が無いのだから。