キズナ~私たちを繋ぐもの~
「……は、……はい」
戸惑いながらの返事に、司と母は笑顔を見せた。
「良かったわ。綾乃が幸せになってくれるなら嬉しい。後の心残りは、達雄の事だけね」
「俺の事は……どうでもいいんだよ」
暗く掠れた声で兄が答える。
私はまだ兄の方を向けないまま、だけど神経だけはものすごく兄に向かっていた。
気がつけば司が目の前に立ち、指輪のケースをポケットから取り出していた。
「持って……来てたの?」
「もともと、今日言うつもりだった」
そう言って、指輪を取りだし私の指にゆっくり通す。
左手の薬指におさまったその指輪は、一ヶ月前と変わらない輝きを放っていた。
「綾乃の事は俺に任せて、お義母さんは少しでも良くなるように頑張ってください」
「ええ。司さんが頼もしい方で良かったわ。……綾乃のこと、よろしくお願いします」