キズナ~私たちを繋ぐもの~


司と母の会話が、頭の中を上滑りする。

兄はどう思ったんだろう。
『同居だ』なんて言っておいて、こんな結論を迎えた事を。

低い声は、怒りを含んでいたようにも聞こえた。

怒ってる?
勝手なことをしてるって思ってる?

だけど、本当にそうだろうか。
心のどこかでは、安心していたりするんじゃないだろうか。

私は『妹』だもの。
手を離れてしまった方がきっといいんだ。

そうすれば兄だって自分の幸せを考える。

そうよ。

これできっとうまくいくはずだ。

私と司が結婚すれば、
母さんは安心して、もしかしたら少しでも良くなるかもしれない。

兄だって、もう私に振り回されなくて済む。

これ以上、最良の方法なんてない。

だから、これでいい。


自分に言い聞かせるようにそう結論付けて、顔をあげた。

その時に見えた兄の目は、暗い輝きを放ったままで。
何故だか、責められたように感じる。

だけど、何を言える訳でもない。
私は黙って、自分の足元に視線を戻した。

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