キズナ~私たちを繋ぐもの~
お母さんがそんなに長くないなんて、
私は今日、初めて知った。
実の親子でもないのに、
兄はその事実を一人で抱え込んでいたんだ。
きっと重かっただろう。
その両肩に乗っているのは、事務的な責務だけじゃない。
私に告げれない罪悪感や、母を励まさなければならないという責任もだ。
実の妹でもない私の為に、兄はそのすべてを抱え込んできてくれたんだ。
もうこれ以上、
兄の重荷にはなりたくない。
自分ひとりでそれができないのなら、甘えを許してくれる司の傍に居るしかないんだ。
「……私、司と結婚するね」
声に涙が絡むのも構わずに、私ははっきり告げた。
「綾乃」
「その方が、良いんだよ。きっと」
兄の瞳が軽く歪んで、その視線が足元まで落ちて行く。
兄にとって、私は一体何だったのだろう。
そんなに切ない顔をするくらいなら、あの時受け入れてくれればよかったのに。
そんな風に兄を責める私は、やっぱり弱く諦めも悪い。
振りきったつもりの心が、小さな悲鳴をあげた。