キズナ~私たちを繋ぐもの~
「司」
「なに?」
「私、一度家に帰ろうかな」
「……どうして?」
彼は持っていた書類を置いて、私の方に向き直った。
「同棲してる、なんて聞こえのいいものじゃないと思う。
司のご両親にも、勝手に此処に転がり込んでたなんて言いにくいし。
母さんの調子も良くないなら、前よりはこまめにお見舞いにも行きたいの。
ここより、実家の方が病院に行くには楽だし」
「……病院なら俺が送っていくし、俺の両親の事はそんなに気にしなくても大丈夫だよ。
元々、俺の事にはそんなに興味が無いんだ。当たり障りのない返答だけしてくれれば大丈夫だから」
「でも、結婚するってそんな簡単な事じゃないでしょう。
例え離れて暮らすのだとしても家族になるんだもの。
……私は、自信ないの。正直自分の親とだってうまくやれてるって実感がないんだもの。変な劣等感は、持っていたくない」
「綾乃」
司は困ったような顔をして、私を宥めるように手を握った。