キズナ~私たちを繋ぐもの~
「お母さん」
「ん?」
なのに今になって、どうして失いたくないなんて思うんだろう。
この感情を、どう表わしたらいいか分からない。
私は自分の両手を組み合わせてギュッと強く握った。
母の視線が宙を泳ぐ。
こっちを見て。
ちゃんと私を視界に入れて。
こみ上げてくる気持ちを、私はそのまま言葉にした。
「……死なないでよ」
「綾乃」
「私とお兄ちゃんを、置いて行かないで」
「……」
「お願い」
訳が分からない。
余命宣告されてから、こんなこと言ったって遅いのに。