キズナ~私たちを繋ぐもの~
以前兄が言った言葉が蘇る。
『親が生きてるってだけで、子供はどれだけ救われてると思ってんだ』
本当だ。
これは、兄だから言える言葉だったんだ。
本当の両親を失っている兄だからこそ。
涙が浮かんでくるのを、辛うじて堪える。
「綾乃」
「お母さんがいなくなったら、……嫌だよ」
ようやく言えた一言に、なぜだか少し心が軽くなった気がした。
母は、ぎこちなく笑いながら、私に向かって手をのばす。
「どうしたの?」
「別に」
「何かあった?」