キズナ~私たちを繋ぐもの~


 金曜日、私はまた母の病室に来ていた。

一緒に居ると、気持ちが辛い。
なのに、死期が近いと思うと顔を見ずにはいられない。

今日は来た時から母は寝ていた。

静かな寝息が病室内に響く。

まじまじと見ていると、年をとったな、と思う。
私の記憶にある、一番生き生きとしていた頃の母は17年も前の姿だ。


「お母さん」


穏やかそうな表情で眠る母は、すっかり痩せて昔の色艶は全くない。


「……お母さん」


それがとても、悲しい。


「綾乃」


後ろから、声をかけられた。
驚いて振り向くと、そこには兄が立っていた。

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