キズナ~私たちを繋ぐもの~
「お兄ちゃん」
「来てくれてたのか。ありがとな」
兄は笑って、私の隣に椅子を持ってきて座った。
「……一人か?」
「うん」
にこやかな兄とは対照的に、私は胸がドキドキする。
司のいないところで兄に会うのは、あの日以来初めてだ。
司に疑われるはずだ。
今だ私の心の中は一つも整理されていない。
こうして近くにいるだけで、兄の動き一つ一つに、ものすごく意識が奪われる。
「元気にしてるのか?」
「う……ん」
「少し痩せたんじゃないか」
「そんなことないよ。それより、お兄ちゃんこそちゃんと食べてるの?」
「食べてるよ。大丈夫。今倒れてる場合じゃないからな」
「……」
兄は静かに母を見る。
呼吸を確認して、安心したように微笑み、そうしてまた私の方を向いた。