キズナ~私たちを繋ぐもの~
「司くんとは?」
「うん。……うまくいってるよ」
「本気か?」
「え?」
兄の手が伸びて、私の左手を掴む。
仕事中に外していたから、今は婚約指輪をつけていない。
兄は私の薬指を撫でるように触った。
「本当に結婚する気か?」
真剣な眼差しに、余計な期待が湧く。
でも違うんだ。駄目。
期待したら駄目だ。
あの日、兄ははっきり言ったんだから。
『妹であるお前を捨てれないんだ』
絞り出したようなあの声は、本音以外の何物でもなかった。