キズナ~私たちを繋ぐもの~
「そうね。綺麗ね」
司のお母さんがにこりと笑って同意する。
そして、私の方に視線を移した。
「司から、色々聞いてるわ。ご苦労をなさったそうね」
「え?」
「お父さまを早くに亡くされて、お母さまはずっと入院されているんですって?」
「あ、……はい」
私は何と答えていいのか分からず、目の前のテーブル中央に置かれた花を見つめる。
「大変だったでしょう」
声のトーンは重く、そのままの重さを保って、言葉は私のお腹のあたりに落ちた。
違和感がお腹を刺激する。
大変なんて事はなかった。
私は、兄との暮らしが楽しかった。
「……いえ」
「お兄さまが面倒みてくださったの?」
「はい」