キズナ~私たちを繋ぐもの~
いただきますも言わないうちに、兄は箸を持って食べ始める。
私は向かいに座ってわざとらしく手を合わせた。
「いただきます」
「むがっ。あ、いただきます」
口に入っていたご飯を呑みこんで、慌てて言う。
もうじき35歳になろうというのに、そういう姿は可愛い。
自然に笑ってしまっている自分に気づいて、慌てて頭を振る。
こんなことを嬉しく感じるのは、いけないような気がした。
司のプロポーズを保留にしておいて、兄の仕草に喜ぶなんて。