キズナ~私たちを繋ぐもの~
呪縛と解放
車は病院の夜間入口の前で停まった。
「綾乃、先に降りて行くんだ。俺は車を停めてから行くから」
「うん。……あの、司」
「え?」
「ありがとう」
「ほら。早く行けよ」
司に促されて、私は助手席側のドアを閉める。
司が、頬を叩いてくれなかったら、いつまでもあの場で呆けていたかも知れない。
彼の決断力の速さと、切り替えの速さに感謝する。
どうか間に合って。
そう願って、エレベータが降りてくるのを待った。
母の病室のある階まで行くと、バタバタと看護師さんが数人歩きまわっていた。
みんな忙しそうで、私の方には気づいていないようだった。